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アナウンサー&パーソナリティ

本のリリックノート ―聴き手がつづる―

2024.11.20 Wednesday
最近出会った本を紹介します。

岩下 紘己 『ひらけ!モトム』 (出版舎ジグ、2020年)

https://jig-jig.com/published-book/jig-03/

週に一度、重度身体障がいがある上田要さんのもとに24時間介助に通っている作者の岩下さん(大学時代)が、

上田さんの語りをもとに 上田さんのこれまでの人生を記録した一冊。
岩下さんが上田さんの語りと向き合う姿勢が興味深いです。

(本文の引用)
一体、上田さんの人生の歴史を聴くとは、生活史を聴くとは、どのような営みなのだろうか。もし録音の止まったときに交わされる他愛もない会話の端々にこそ上田さんらしさを感じるとしたら、私は何に耳を傾け、何を録音し、記録しているのだろうか。
上田さんが自らの人生の歴史として語ってくれたものとは、何なのだろうか。(p89)

私たちは他者の語りを聴くとき、そしてその語りを理解しようとするとき、たいてい自分の経験に引きつける。自分自身の経験と照らし合わせて想像する。
知らず知らずのうちに、自分の枠組みに沿わせて他者の語りを曲げてしまう。
特に、苦しみのなかにあるような他者の語りを聴くとき。(p92)

聴き手の姿勢。
聴き手次第で、相手の話す内容は大きく変わってくることを実感しました。
作者と上田さんとの関係性が伝わってくるし、上田さんの人生と同時に、作者の人柄や考え方も感じ取ることができます。
この本を読んでいると、頭の中に二人が話している映像が浮かんでくるんです。

作者、岩下さんのように、自分の聴き手としての姿勢を客観的に眺める機会をもつことを自分も大事にしていきたいと感じます。
相手と自分は違う人間。
相手が話していることをすべて理解できる、汲み取れると思うのは危険。

その意識をもちながらも「相手を理解したい」という思いをもつことが、
相手と通じ合うことにつながるのではないかと感じました。